2015年1月18日日曜日

柿栽培


暮れに電気屋さんのほんださんに会いました。
「今年は大変だったよ。親父を手伝って、毎日毎日柿の収穫して、まいっちゃった。こんなこと初めてだよ」
ほんださんの家は、生まれたときからの柿農家です。
「親父が間違ったもんだから、たくさん生り過ぎちゃってさぁ。しかも『今日は行きたくない』なんて言っちゃって。親父がすっかり衰えちゃったよ」
お父さんは、80歳をとっくに越しています。


柿農家は、選定やら何やらで、毎年柿のなる量を調節します。
柿には生り年と裏年があるのですが、それを同じにするのが、腕の見せどころです。あまり気張って生らせると次の年にも次の次の年にも響く、勘と経験がものをいう作業なのです。

「でも、お父さん経験を積んでいるんだから、あまり間違いはないんじゃないの?」
「それが、ダメ。柿職人は去年どうだった、一昨年はどうだったって、柿の木一本一本について記憶しておかなくっちゃなんないのよ。何百本もね。それを間違えちゃうと、手入れ全体が間違っちゃうってわけ。年とると、その記憶がいい加減になっちゃって、見ての判断は間違いないんだけど、全体の情報量が少なくなってしまうんだよ」 
「あちゃぁ、難しいんだねぇ」
「おれも、こうして生活できているのは、全部柿のおかげだからなぁ」
「でも、今からだと、柿の手入れのことは何もわからないんでしょう?」
「そうなんだ、何にもわからない」


秋には鈴生りの柿を見て感心しているだけですが、柿農家は一年中手入れが欠かせません。
果樹の寿命はわりと短いので、うまく上手に世代交代もさせていきます。若い木より老いた木の方がおいしい実が生りますが、量は採れません。それをどう調節するかで、経営を計ります。
植えたばかりの苗は、こもを巻いて、しっかり養生しています。


手前の木はずっと前に、奥の木は昨年、皮を剥いでしまった柿の木です。
「柿の木って、昔から皮をはいでいたの?」
皮の下に虫が入るからと、柿畑の矮性(わいせい)仕立てにした柿の木は、たいてい皮が剥いであります。
「あれは昔は辛い作業だったんだよ。おふくろなんて何回も皮をむいてて手を切ったって。ひどい怪我をしたした人もいたよ。でも今は高圧の水で剥くから、簡単なものだよ」
石に字を彫るのも、石を切るのも、今ではみんな水とは知っていましたが、柿の木の皮まで水で剥いていたとは、全然知りませんでした。 



 

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