2009年11月14日土曜日

フジの実



藤の花を見るのが好きでした。庭に咲いているものより、車窓から山の木々にからまって咲いていたりすると、うっとり見惚れたりしていました。

ところが、農村に住みたいと思い、気に入った土地(長く放置され、荒れていた畑地)にめぐり合い、クズ、セイタカアワダチソウ、篠竹などをやっと刈り取ってみたら、そのまわりの雑木林や、もと畑だった土地の、木という木に、蔓が巻きついているのに気づきました。

夏場は、敷地内の草刈りだけでも大変なのに、ちょっと油断すると、その荒れた雑木林や畑から、せっかくきれいにした我が家に蔓が伸びてきます。
まわりに生えている、山桜、クヌギ、コナラ、ムラサキシキブなど、すべての木は蔓に巻きつかれていますが、蔓に厚く覆われていて、盛り上がってはいるけれど、木かなにかもわからないものもあり、見た目もうっとうしくて、汚らしい感じでした。
そこで、それぞれの地主さんの了解を得て、数年かかって、背よりも高く伸びている篠竹を刈り、木々を被っている蔓を払っています。私は「山仕事」と称していますが、重労働ですが、やりはじめるとけっこう夢中になってしまいます。
主な蔓は、フジ、アケビ、クズなど、それまで好きだったものばかり。でも思い切って、目につくものは全部切りました。
すると、瀕死のクヌギ、コナラ、山桜などが生き返り、ミズキ、センダン、畑からは、柿、梅などが姿を現しました。

それでも残っているフジもあります。我が家の入り口あたりに、切り忘れたフジがあり、季節になると藤色の花びらを落とし、しばらくすると、平べったい種を落とします。
高いコナラに巻きついたもので、高過ぎて花そのものは見えないし、昨年、とうとうそのフジも切ってしまいました。直径が、15センチほどあったでしょうか。太いのでフジの木とは思わず、切り残していたものでした。

それでも、春になるといたるところにフジが咲きます。フジとかクズとかは、マメ科の植物ですから、地中に窒素を固定するだけではなく、蔓で被って人を寄せつけにくくして、せっせと土壌を豊かにしていたのでしょう。恐るべし、自然の力です。

山や放置された田畑には、どこでも草や潅木が生い茂っています。古老の話では、その昔はみんなで下草を刈るし、落ち葉もさらうので、今は篠竹だらけの山も裸足で歩けるほどきれいだったそうです。
でも、日本の山から松が消えたのは、化石燃料が使われるようになったり、家畜の餌にされなくなったりして山がきれいにされなくなり、土壌が豊かになったからという説もあります。荒地でないと松は育たないのだそうです。

我が家も、野性味が年々そこなわれて、暖かい「人の住処感」が増していますが、これも他の生物たちともせめぎ合いに、いまのところ私たちが太刀打ちできているということに他なりません。

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